2001年11月 青少年の喫煙防止に関する提言

日本学校保健学会

 日本学校保健学会は、喫煙と健康の問題に鑑み、これまでの研究活動を踏まえて学校関係者はもちろん社会全体に対して、青少年の喫煙防止のために為すべき事柄として以下のような提言を行う。

【提言】学校をタバコのない場所に!

1. 学校・教育行政機関に対して

  • 「学校のヘルスプロモーション」の一環として、学校全体を禁煙とする。
  • 児童生徒および教職員が、現在から将来にわたって喫煙を始めないこと、または喫煙を止めることを奨励し、それを手助けする。
  • 児童生徒の喫煙防止に関する指針(ガイドライン)を策定する。そして、喫煙防止プログラムを作成・実施し、それを定期的に評価する。

2. 教職員に対して

  • 自らが、タバコを吸わないという望ましいモデルを児童生徒に示す。そして、親(保護者)や地域の人々と共に、子どもを受動喫煙から守るための環境整備を進め、また地域・社会における受動喫煙防止対策の推進に積極的に協力する。

3. 地方・国に対して

  •  タバコ広告の禁止、テレビでの喫煙場面の規制、パッケージ警告表示の強化、学校及び通学路付近におけるタバコ自動販売機の禁止、タバコに対する増税など、青少年の喫煙防止のために極めて大きい影響力を持つ取組みを実施する。

【提言理由】

日本学校保健学会は、学校保健に関する研究とその普及・発展を図ることを目的として、1954年に設立された。2002年からは、これまで以上に健康教育を重視した新教育課程が始まるとともに、新しい保健教育には、教育的な働きかけと環境整備の両面から児童生徒の健康的な生活行動を形成しようというヘルスプロモーションの考え方が取り入れられた。このように学校健康教育が重視される現在、日本学校保健学会の果たす役割はますます大きい。

喫煙問題の重要性

 現在、タバコ及び喫煙は、世界全体が取り組むべき重要な健康問題となっている。タバコは依存性薬物であり、日本では喫煙者の半数以上がニコチン依存症と推測されている。また、喫煙は各種のがんや心臓病、呼吸器疾患など、多くの疾患の原因となっているにも関わらず、諸外国と比較しても未だ日本の成人の喫煙者率は高く、また多くの喫煙者が未成年から喫煙を開始しているという事実がある。したがって、喫煙の防止は健康教育における極めて重要な課題の1つと考えられる。

喫煙対策の動向

 WHOは、タバコ対策の地球規模の取組みを進めており、欧州連合はそれに答えて、すでに、タバコの販売規制や広告禁止などに関する合意をしている。
日本では、文部科学省が「学校の原則禁煙」を指示する通達(1995年)を出し、厚生労働省が「健康日本21」(2000年)において、「未成年者の喫煙率0%」、「公共の場や職場における分煙100%」などの目標を示した。また、日本肺癌学会など5つの医学系学会・研究会が、タバコ対策に向けての提言などを行い、日本医師会も禁煙キャンペーンを開始した。なお、2000年末には未成年者喫煙禁止法が半世紀振りに改正され、未成年者にタバコを販売した者への罰金が50万円以下に引き上げられた。

未成年者と教師の喫煙

 厚生労働省の調査(1999年)では、15~19歳の未成年者の喫煙率は、男性19.0%、女性4.3%であった。別の調査では、高校3年生の喫煙者は、男子36.9%、女子15.6%に上っていた。一方、いくつかの調査によると教師の喫煙率は、男性が30~50%、女性が1~5%であった。また、喫煙防止教育の推進を担う保健体育科教員の喫煙率が、一般教師よりもむしろ高いとする調査もある。

青少年の喫煙防止の意義

 青少年の喫煙防止は、青少年期の健康保持に役立つばかりでなく、将来の、生活習慣病などの長期にわたる健康問題の予防と早世の防止にもつながる。また、青少年期からの喫煙防止により、大人の喫煙者を大幅に減少させることができる。さらに、青少年の喫煙は他の薬物の入り口ともなるので、喫煙防止は薬物乱用防止の役割も果たす。これらのことから、喫煙防止対策の中でも青少年の喫煙防止は特に重要であるが、そのためには、家庭、学校、地域社会、産業界、及び地方・国が、各々の立場から、ヘルスプロモーションの考え方に基づき、教育的な働きかけと環境整備の両面に関して、最大限の努力をしなければならない。

 なお、日本学校保健学会としては以下の貢献をする。

  • 上記の内容が実現されるよう、関係機関・団体等に要請を行う。
  • 他学会や保健医療関係団体と連携して、次のような事柄について学校に対する情報提供と支援を行う。「青少年の喫煙問題の重大さ」、「青少年の喫煙問題解決に向けた環境づくりの重要性」、「無煙学校づくりの方法」、「喫煙防止、禁煙プログラムの紹介」などについて。